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これだけは知っておいて!!

第43回   【柔整八策 ― そのⅠ】

2012/03/01
「柔道整復師」の質の保証を確保するための「資格免許」

近年、養成施設を卒業し国家試験に合格するとすぐに受領委任の取扱いの手続きをして開業する人が多くなってきている。今年度の国家試験合格者のうち何名の人が合格即開業するのだろうか?後に述べるが柔道整復師としての「患者さんを治す」という技術、「業務範囲外」だと判断し、しかるべき専門医を紹介する診立て、「医療従事者」としての倫理観などが養成施設就学3年間もしくは4年間で本当に身についているのかはなはだ疑問である。

我々、医療従事者の「免許」とはどういうものであろうか?「医事法セミナー(上):医療科学社」の著者である前田和彦先生によると
「医療とはもともと禁止行為なのである。もともと禁止されていることができるようになるというのは、技術と倫理が備わり、国民に迷惑をかけるおそれがなく信頼ができるという意味合いで免許が国から与えられたということである。したがって、免許とは禁止行為の解除であり、医療従事者の免許はそのような危険な行為、つまりもともと禁止されている行為(医療行為)を任されるという責任をはっきりと知るべきである。」
「ここで、法律上の免許の効力ということについては、学校を卒業して国家試験に受かった段階ではなく、厚労省の名簿に登録されることをもって免許とする、つまり効力を持つと解釈されている。厚労省、国側の管理として名簿登録されることによって効力を持つという点で医療従事者の免許は明らかに国側の制度の一環であるということが明らかになる。それが法律上の免許の効力、そして医療従事者の免許の効力としても確認すべきである。」
と言われている。

柔道整復師法第4章 第15条には「医師である場合を除き、柔道整復師でなければ、業として柔道整復を行なってはならない。」とあり、医師法第4章 第17条「医師でなければ医業をなしてはならない」。歯科医師法第4章 第17条「歯科医師でなければ歯科医業をなしてはならない」と禁止行為の解除が各資格の業務として決められおり上記の医療従事者の免許とは「禁止行為の解除」だということがわかる。
すなわち「その資格免許を持ったものでしかその業をしてはならない」ということである。

それでは「業としての柔道整復」とは何であろうか?
このことが明確化されなければ何が禁止され何が解除されるのかがわからない。

ここではあくまでも「柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について」(厚労省医療課長通知)に記載されているものを要約すると下記のようになる。

急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲及び捻挫、挫傷
内科的原因による疾患は含まれないこと
骨折、脱臼は医師の同意がなければ応急手当のみ
単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外であること

前出の前田和彦先生が業務範囲の拡大やそのための法などの見直しは下記のようなことが必要と言われている。

「現在は患者中心の医療である。患者を中心にすえた場合に今のままでは適切な医療のサポートを柔道整復師が資格上行えないというのならば業務拡大するべきであり資格を見直すべきである。そのことが何もなく、いきなり業務の拡大や地位の格上げを目指してもそれは現実的ではない。
また、医師(特に整形外科)の業務範囲を侵襲することにおいて柔道整復師の資格制度が拡大することは非常に難しい。
法というものは、個人や一定の集団のためではなく、そこに係る人の全体論としてつくられる。医療そして患者というものに直接なり間接にかかわり、その向上がみられるということがない限り、法としてまたは医事法として変える必要性がないのである。
現在は柔道整復師が患者をサポートする立場として医師と同様、またはそれに準ずるかたちで行われていくことが出来ていること、またはそれに対する教育機関として、医師と同様ではなくても、それに準ずる程度の教育制度が整い、または卒後の研修制度が充実してくるならば資格や業務の見直しは可能なのである。なぜならば、それは医療全体、そして患者中心の医療としての見直しだからである。」

 

そうした意味から何度もいうが「もともと禁止されている柔道整復業ができるようになるというのは、技術と倫理が備わり、国民に迷惑をかけるおそれがなく信頼ができるという意味合いで免許が国から与えられたということ」なのである。
そのためには柔道整復師個々は学術の研鑽に努め患者さん(国民)の信頼と負託に応えられるようにしなければならない。
そして、業界としてはより早い充実した「卒前・卒後臨床研修制度」の構築とそれを基本とした厳格な「受領委任払の取扱い」許可・認定の実施などを行わなければならないと思う。