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これだけは知っておいて!!

第12回   【労災保険について(そのⅠ)】

2010/11/01

労災保険は、昭和22年に労働基準法とともに使用者の災害補償責任を確保する制度として発足した。

労災保険制度は業務災害(仕事が原因となって生じた負傷、疾病、身体障害、死亡)、通勤災害(通勤が原因となって生じた負傷、疾病、身体障害、死亡)を被った労働者やその遺族に対して保護のための必要な保険給付を行うこと.を主たる目的としている。

 

1.柔道整復師による施術
 

医師以外の者により給付される療養の一つに骨折や脱臼、捻挫等に対して行う柔道整復師の施術がある。外傷の多い労働者の療養を行う労災医療においては柔道整復師の施術も重要な分野になっている。

柔道整復師の施術については「柔道整復師法」によりいろいろな制約・制限が設けられている。

柔道整復師が労災医療を担当する場合は「柔道整復師法」に従いながら労災における算定基準に基づき施術を行っている。

具体的には、各都道府県労働局長と都道府県柔道整復師会(社団)並びに柔道整復師(個人)との間で協定・契約を結び労災算定基準に基づいて運用されている。尚、労災保険の取扱いも原則として健康保険の取扱いに準じて行われている。

 

2.指名柔道整復師

労働者が業務災害又は通勤災害により負傷した場合の柔道整復師による療養給付の方法は、傷病労働者が施療に要した費用を直接柔道整復師に支払い、その支払った額を労働基準監督署(政府・国)に請求するのが原則ですが、労災保険指定医制度のように柔道整復師が傷病労働者に対して施術を行った場合の施術料金を傷病労働者に負担させることなく直接、労働基準監督署(政府・国)に請求することができれば、傷病労働者にとって事務的・経済的ともに軽減される。労災保険指定医療機関と同じような取扱方法として設けられたものが指名柔道整復師制度である。

都道府県労働局長から指名柔道整復師として指名された柔道整復師は、施術を行った傷病労働者から施術料金の支払いを受けるかわりに、その施術料金の受領を委任する旨の委任状を受け、施術料金の請求書にこの委任状を添えて所轄労働基準監督署に提出し、当該労働基準監督署から直接施術料金の支払いを受けることができる仕組みとなっている。

この制度により傷病労働者は事実上現物給付と同様の療養を受けることが出来る。

指名に関する手続きは各都道府県労働局において定めた方法により行うこととなっており、その指名期間は原則として2年間であり、この期間経過後、指名を受ける時はその期間が更新される。

 

労災指定医療機関とは

原則として、傷病労働者は医療機関で受けた診療、治療、療養の費用を支払うことなく、労災保険法で定められた範囲の療養補償給付を現物給付(医療行為)という形で受けることになります(通勤災害の場合の療養給付については、200円の本人負担分があります)が、その診療や治療を行っているのが労災病院または労災指定医療機関です。

労災指定医療機関において傷病労働者の診療に要した費用は、指定医療機関と保険者である政府との間で清算し、一切の費用についての労働者負担は生じない仕組みになっています。

この労災指定医療機関は都道府県労働局長が指定を希望する病院や診療所などの医療機関からの申請にもとづいて指定をすることになっていますが、労働局長が医療機関を指定して傷病労働者について療養(補償)給付の支給を決定する行為は、法的には①労災保険指定医療機関が政府に対して療養費に関する診療費償還請求権を取得すること、②その限度において労災保険指定医療機関は傷病労働者に対する診療報酬請求権を失うこと、③労災保険指定医療機関と傷病労働者の間には有償双務契約(医療機関は対価的価値のある医療を提供し、傷病労働者は応分の費用を支払うこと)が成立することとみなされていますが、具体的には、「労災保険指定医療機関療養担当規程」で双方が遵守すべき事項が定められています。

引用:新労災保険の用語の解説:(財)労災保険情報センター、2007